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中国・西安市からのレポートをアップしました

元・山田組社員で現在は西北工業大学教授の呉農さんから大変興味深いレポートが届きました。呉教授には、これからも西安からの最新レポートを不定期で送ってもらうことになりましたので、どうぞお楽しみに…

中国西安市における集合住宅に居住する高齢者の住生活
                  中国・西北工業大学教授 呉農

 中国総務省の統計によると、中国では2011年時点で60歳以上の高齢者は、日本の総人口をはるかに超えて、1億8,500万人に達する。更に2050年には、中国の総人口の33.9%に当たる4億3,900万人が高齢者で占められると予測されている。他方、1979年から実施された 「一人っ子政策」や、近年実施された 「戸籍緩和制度」の影響により、親子が別居し、高齢者のみの世帯が急増しつつある。中国における家族の居住形態にこのような新しい動向が始まっている。

 中国における高齢化の特徴としては、人口の多さゆえの高齢者の絶対数の増加、都市部において特に高齢化が進行していることから生ずる高齢化率の地域格差、そして所得水準の低いなかでの高齢化の進展が挙げられる。中国において人口の高齢化率(2012年末)が9.4%を超える地域は経済が発達している東部、沿海部だけでなく、経済発展が相対的に遅れている内陸部においても見られる。西安市は中国西北地域における最大都市である。 西安市においては、若い世代と高齢世代が同居する家族が多く見られる一方、若い世代が東南沿岸へ出稼ぎに行くことにより、高齢者のみの世帯も増加しつつある。

 現在、中国の居住形態は集合住宅が中心である。中国の都市化率は、1950年が11.2%、1980年が19.4%であったのに対し、2011年には51.2%前後に達しており、今後50年以内に中国の都市化率は76%以上に達すると予測され、超高度都市化となる見込みである。厳しい土地利用制約に直面した結果、居住密度の高い集合住宅が都市住宅の主流となり、この傾向は今後ますます進展するものと推測される。したがって、今後、集合住宅に居住する高齢者が中国では一層増えるであろう。

 ところが、中国の不動産業者が集合住宅を開発する際に、何よりも延床面積を最大限に商業化することを優先し、高齢者の住みやすい住宅を開発するために必要な高齢者の心理や行動様式に無関心であることが現状である。このような現状のもとで、集合住宅における高齢者の住生活に関する研究は喫緊の課題であり、さらには企業にとって大いなるビジネスチャンスの可能性も秘めていると言えよう。